「あいつのための復讐ってことかよ?」


 みんなが押し黙る中、波多君は吐き捨てるように言った。


「わ、わかんないけど……」

「冗談じゃねぇ、俺は関係ないだろ? やるならいじめた奴らをやれよ! 大体あいつだって変わろうとしないからいじめられたんだろ、自業自得だ」


 波多君は苛つきを抑えずにまくし立てた。

 ――自業自得だなんて、そんなわけがない。

 いじめられないために無理やり自分を変える必要なんてないはずだ。

 そう思うけれど、波多君に反論するのは気が引けてしまい、言葉にはならなかった。


「……もう、やったんだよ、きっと」


 私が何も言えないままでいると、そう言ったのは祐奈だった。


「は? 何が?」


 食って掛かるような波多君にも尻込みせず、凛とした口調で祐奈は続ける。


「衣純をいじめてた奴らはみんな死んでる」


 ――とっくに、死んでいる?

 その冷たい響きの言葉に、波多君も何も言い返せないようだ。


「いじめに直接関わった人はみんな、去年、不審死を()げてるんだよ。怖がって、誰も噂すらしないけど」


 ……知らなかった。

 いじめに直接関わった人はみんな死んだなんて、そんなの、それでは余計に――次は見ていただけの私たちだ、と言われているようじゃないか。