祐奈が言ったけれど、ぴんと来なかった。

 そもそも中学にみんながいたことさえハッキリとわかっているわけではない。


「そうなんだ……水無君だけ、僕たちとは通っていた中学が違う」


 確かに、心も水無君とはアリス部に入ってから知り合ったと言っていたような気がする――そんなふうに、思いを巡らせたとき。


「いや、違うな」


 波君がぼそりと呟いた。


「でも、中学のとき水無がいた記憶はないけど?」


 祐奈が反論する。


「バイト先で水無の履歴書を見たことがあるけど、確かに俺たちと同じ中学だった」

「何だ……そうなの」


 少しだけ沈んだ祐奈の口調は、まるで犯人を決めつけられなくて残念がっているように思える。

 そんな風に考えてしまう自分のことを、嫌いになりそうだった。


「それはそれとして、中学校が違うと何なんだ?」


 咲真の言葉に、それもそうだと頷く。


「……みんな、中学生の時に僕以外で、もう一人のアリス好きがいたのは覚えてる?」


 ――もう一人のアリス好き。

 その言葉を聞いて、すぐに思い当たった。


「あの子にとって、僕たちは傍観者(ぼうかんしゃ)で、もしかするとそれは、加害者だったんじゃないかな……?」


 恭君が語るのは、私が目を逸らし続けた事実だった。

 そうだ、私たちアリス部はみんな『同じような』闇を抱えている。

 そして今さらに、『同じ』闇を抱えていたのだと思い知った。

 ――私たちはみんな『あの子』に、恨まれているのかもしれない。