「何、これ……」


 昨日のことが夢であったかのように、庭園は綺麗になっていた。

 ギロチン台は初めて見た時と変わらぬ光を放っている。

 辺りを染めていたはずの桃矢君の血液は見当たらない。

 しかし……庭園の隅に横たわっている白羽部長の遺体が、夢なんかではないことを物語っていた。


「仮面のやつらが片付けたのか……?」


 咲真も、目を丸くしている。

 桃矢君の遺体は、きちんと(とむら)われたのだろうか。

 ……こんなことをする犯人だ、きっと、その望みは薄いだろう。

 ここから出たら、白羽部長も桃矢君もきちんと弔ってあげたいと思う。

 ――消えた桃矢君の痕跡、変わらぬ白羽部長の惨状。

 他には、特にこれといったものも、もちろん脱出口なんてとても見つからなかった。


 ……そうして私たちは諦めて、それから何日が経つだろう。


 庭園と屋敷を行き来する、変わらない日々。

 切り取られた空はいつだって穏やかで、私が今どこにいるかを忘れてしまう。

 平和を装う景色の後ろには、いつ殺されるかわからない恐怖が付いて回っているというのに。

 ふと不安に襲われたときは、咲真と共に庭園に行くことにした。

 不毛な行為だとしても、部屋でふてくされているよりは気を紛らわせることができた。


「あ……みんながいるよ?」


 今日もそうして庭園に行くと、波多君、恭君、祐奈、千結の姿が目についた。