咲真は、ちゃんと前に進もうとしている。

 ーー怖がっていても、何も変わらない。

 白羽部長は逃げ道を探そうとした。

 桃矢君も冷静ではなかったけれど、ここから逃げようとしていた。

 ……私も、みんなについて行かなきゃ。


「わ、私も行く! ちょっと待ってて」

「ありすは無理しなくても――」

「お願い!」

「……わかったよ」


 仕方ないなぁ、とため息混じりに言う咲真を廊下に待たせ、急いで簡単に身支度を整えて、パンを口に押し込んだ。

 ……庭園に行くのは、怖い。

 でも、頑張らないといけない。

 こんなときだからこそ、頑張らないと。


「よしっ」


 鏡の前で、自分の疲れた顔に喝を入れる。

 ――私も、みんなも、ここから逃げ出すんだ。

 ……どうか、これ以上、一人でも欠けませんように。

 意を決して屋敷から出ると、そこには信じられない光景が広がっていた。