慌ててドアに向かうと、それは咲真の仕業だったらしい。


「ありす、まだ寝てるのか?」


 心配そうな声が投げかけられる。


「い、今起きたよ!」


 ドアを開けると、咲真は手にパンを持っていた。


「それ、どうしたの?」


「昼の時間、終わったからありすの分。食べなきゃダメって波多に言われたろ?」


 昼の時間が終わった……それはつまり、時刻は午後一時過ぎを指しているということだ。


 私、そんなに寝てしまっていたんだ。


「ありがとう……」


 それにしても、昨日あんなことがあった食堂だ。

 開いている時間だとしても私はとても行く気にはなれなかっただろう。

 行けばきっと、桃矢君の悲鳴を思い出してしまう。


「ちゃんと食べなよ? 俺はこれから、庭園に行ってくる。何かわかることがあるかもしれないし」

「え……でも」


 庭園になんて、それこそ、昨日の惨劇を思い出してしまうだろう。

 脳裏にこびりついて離れない、桃矢君のあの光景を。


「正直、怖いけど……でも、怖がっててもどうしようもないからさ」