――それはあまりに突然で、一瞬だった。

 桃矢君の頭が、宙に舞う。

 ……ああ、人が死ぬのはこんなに簡単なんだ。

 目の前の光景を理解する前に浮かんだのは、そんな他人事のような感情だった。


「嘘……もう、嫌……!」


 桃矢君の頭が落ちて、軌道上の緑の芝が赤く染まる。

 ……こんなのが現実だというの?

 すべて夢ならいいのに……目を閉じても、みんなの声はすぐ傍で聞こえてきて、ここは現実だと思い知らされる。


「――ハートの女王は実在するってこと……?」

「桃矢はそいつに殺されたのか……?」


 私と咲真は、信じたくない思いをつい(こぼ)した。


「……この中の誰かに、な」


 私たちの声に応えるように、波多君がそう呟く。


『三月うさぎは処刑されました』


 私たちが立ち尽くす中で、耳障りな声の主だけが楽しそうに笑っていた。