抵抗しても、桃矢君の力には敵わない。


「おい、ふざけんな!」

「いい加減にしろよ」


 咲真が桃矢君を私から引き剥がそうとし、波多君が椅子から立ち上がった時だった。


『ハートの女王が処刑を望みました』


 その歪んだ声の放送は、私たちの喧騒(けんそう)を一瞬にして沈めた。


「は……?」

「ほ、ほら見ろ! ハートの女王は、いるんだよ!」


 ――ガァン!

 そんな音をあげて、食堂の入り口ではなく、閉ざされていたほうのドアが開かれた。

 みんながそちらに注目するとそこからは、見たことのないような銃を持つ、不気味な仮面を被った集団が現れた。


「な、何、この人たち!」

「本物かよ、あれ……?」


 呆然とするのも束の間、仮面の集団はいつの間にか私の目前に迫っていた。


「え、嘘、でしょ」


 そして、一人に腕を掴まれた。


「ありす!」


 咲真が私と仮面を引き離そうとするも、いとも簡単に振りほどかれてしまう。


「咲真! 嫌、助けて――」