呆然とギロチン台を見つめてしゃがみこんでいるのは、千結(ちゆ)祐奈(ゆうな)

 険しい顔で話し込んでいるのは、(きょう)君と桃矢(とうや)君。

 波多(はた)君が「どうなってんだよ!」と怒号を飛ばし、白羽(しろはね)部長がそれをなだめている。


「ありす、大丈夫だった?」


 不意に声をかけられそちらへ振り向くと、水無(みずなし)君が立っていた。

 彼の腕には、彼の恋人であり私の親友である(こころ)がしがみついている。


「うん、私は大丈夫だよ」

「よかったぁ! ありす、なかなか起きないから心配してたんだよ」


 そう言いながら心が私に抱きついてきた。

 栗色のゆるいパーマの髪が揺れて、甘い匂いが漂う。


「何ともないならよかった」


 水無君はほっと(ほお)を緩めて呟いた。

 中性的で端正な顔立ち。

 その王子様のような微笑みは、いつも学校中の女子の視線をさらっている。


「私のことよりさ……これ、何が起こってるのかな?」


 私が口を開くと、二人とも表情に影を落としてしまった。


「二人も同じだろ? わからないよな、何も」


 咲真が言うと、水無君と心は頷いた。