……こんな時でなかったら、さぞおいしく食べられたことだろう。

 今、こんなものを用意されたところで、喜ぶ気も食べる気も起きない。

 部屋に窓はないが、私たちが入ってきたのとは別に一つのドアがある。

 配膳用、つまり犯人が使っているのだろうか。

 何にしても、誰もそれについて言わないということは例に漏れず鍵がかけられていてどうしようもないのだろう。

 食卓を囲うように等間隔に置かれている椅子には、既に六人が座っていた。

 私と咲真も、隣同士の席につく。

 そうすると、来ていないのは桃矢君だけだ。


「ねえ、これから、どうすればいいんだろう……」


 心が水無君に囁く声が聞こえた。

 水無君は、何も言わずに俯いている。

 ……私が聞かれても、きっと彼と同じ反応をしてしまうだろう。

 白羽部長を失って、このままみんながバラバラになってしまったらどうしようという不安が付き纏う。

 重い空気が、体にのしかかる。

 時折、波多君が料理に手を伸ばす音だけが沈黙の中で響いていた。


「……よく、食べる気になるね」

「……食わなきゃ力は出ないし、思考力は落ちるし、良いことないからな。それに、毎回毎回こうやって食事が用意されるのか、いつまで用意されるのかわかんねぇし。食える時に食った方がいい」