「嘘ですよね!?」


 千結が声を張り上げたかと思うと、布をめくってしまったのだ。

 止める暇もなく、白羽部長の遺体はあらわになってしまう。

 千結は時が止まったかのように呼吸を止め、そして。


「嫌ああああぁっ!」


 ――絶叫した。


「千結!」


 祐奈が駆け寄って、千結に手を伸ばす。

 すると千結は、プツリと糸が切れたように、祐奈の腕の中に倒れこんだ。


「大丈夫!?」


 私と心も傍に寄ったが、千結は完全に意識を失っているようだった。

 咲真と波多君が、白羽部長の遺体に布を掛け直す。


「……千結ちゃんは、見るべきじゃなかったね」


 水無君が言った。

 もっと、気をつけておけばよかった。

 そうすれば千結は、こんなショックを受けずに済んだのに。

 ……後悔ばかりが浮かんでは、今更どうすることもできずに諦める。

 そんな繰り返しに、嫌気がさす。

 ――白羽部長が見つけてくれようとした逃げ道は、閉ざされてしまった。

 私たちは、ここから逃げられないのだろうか。

 みんなが表情に(かげ)りを落とす。