画面の中のおじさんは、ポストを覗き込んでいる。

 明らかに、不審な動きだった。

 ……でも、この人が手紙の差出人だという決定的な証拠はない。


「……でも、これだけで決めつけるのは――」

「そんなこと言って、エスカレートしたらどうするんだ?」


 ……それもそうだ。

 直接的に何かされたらと思うと、怖くてたまらない。


「そう、だよね……」

「絶対、こいつが犯人だって。犯人じゃないとしたら、何のためにこんなことしてるんだよ?」


 反論が思い浮かばない。内心、咲真の言う通りだと認めていた。

 ――きっと、このおじさんが犯人なんだ。


「……ありすが言いづらいなら、俺が警察に言っておくよ」


 その出来事があった日から、手紙が私の元に届くことはなくなった。

 そしてこのストーカー騒ぎをきっかけに、私と咲真は親密になり付き合うことになったのだった。

 でも、ハッピーエンドではなかった。

 自分では気づいていなかったが、私の心はいつの間にか傷を負っていた。

 ――咲真以外の男の人が、怖くてたまらなくなってしまったのだ。

 触れるのはもちろん、話すこともできずにあらゆる男の人を避けていたら、いつの間にか学校では浮いた存在になってしまった。

 しかし高校に入ってアリス部に誘われ、白羽部長やみんなの協力で少しずつ慣らしてもらい、話せるようになるまで回復した。

 みんな抱えたものは違うけれど、みんな同じように、アリス部に助けられてきたのだ。

 みんな、白羽部長のおかげだ。

 ――それなのに、どうして。

 どうして白羽部長が、こんな目に合わなければならなかったのだろう。