――白羽部長は、優しくて頼りになる、理想の先輩だった。

 『アリス部』の部員みんな、少なからず同じことを思っているはずだ。

 部員は全員、他ではうまく生きられなかった人たち。

 理由があって、孤独だった人たち。

 白羽部長はそんな人たちをまとめて、部活という一つのコミュニティに属させてくれた。

 みんなそれぞれが少なからず暗い闇を抱えていたけれど、白羽部長のおかげでそれを拭うことができた。

 私ももちろん、例外ではない。


 ――始まりは、中学二年生の頃。

 冷房の効いた部屋を出ただけで肌が汗ばむ夏の朝、唐突に、けれどひっそりと、私の日常に異常が訪れた。


「何だろ、これ」


 毎朝、ポストからお父さんが読むための新聞を取ってくるのが日課だった。

 しかしその日は、新聞と広告紙の他に、一通の手紙が入っていた。

 白い、シンプルな封筒。

 そこに差出人の名前は無く、ただ少し震えた字で『ありすへ』と書かれている。

 スマホ、ネットのこの時代に手紙なんてもらう覚えもなく、不審に思った。

 しかし、もしかしたら。

 ラブレターかな? なんて少しだけ期待をして、家族に見られないようにその場で開封することにした。