もしかしたら、ロープが切れてしまったのかもしれない。

 しかしロープだけ、という軽さには思えない。

 この人数で引いているからはっきりとはわからないが、確かに手応えを感じる。

 ……なんとなく、嫌な予感がする。

 ――ドクン、ドクン、と自分の心臓が(せわ)しなく脈を打つ。


「なっ……」


 何とも言えない緊張感の中でロープを手繰(たぐ)り続けていると、先頭の咲真が声を漏らした。


「咲真、どうしたの?」

「これ……」


 そう言って咲真がみんなに見せたのは、赤く染まったロープだった。


「何、それ……!」


 思わず、ロープから手を離してしまった。

 ――ロープを真っ赤に染めあげているそれは、間違いなく血液だと直感した。


「嫌、嘘でしょ……」


 心が涙目になって、口を押えている。

 信じたくない――しかし、無情にもその赤色を見れば見るほど残酷な現実に引き戻されてしまう。


「しっ、白羽部長! 大丈夫ですよね? 無事ですよね!?」


 恭君の問いに、答えは返ってこない。

 みんな、確信したと思う。

 大丈夫ではない、無事ではないのだということを。