白羽部長の悲鳴が聞こえて、ロープが勢いよく生け垣の中に引かれ始めた。


「何だ!?」

「痛っ……!」

 ロープを持ち上げていた咲真の手のひらに、摩擦で負担がかかる。

 それでも咲真はロープを離さなかったが、このままではロープが全て飲み込まれてしまう。

 そうしたら白羽部長は生け垣の中で迷ってしまうかもしれない。

 慌てて私もロープを掴んだが、手のひらが焼けるように熱い。

 みんながロープを掴み、波多君が思い切り引っ張って、やっとその勢いは止まった。


「何なんだ、一体……!」

「し、白羽部長っ! 大丈夫ですかっ!?」


 心の呼びかけに、白羽部長からの返事はない。


「引っ張るぞ!」


 波多君の一声で、みんなが同時にロープを引く。

 しかしロープは、何故だかぴくりとも動かない。

 何かに引っかかってしまったのかもしれない。


「くそ、ダメだ……!」


 手の力を緩めて、数秒経ったとき、ぴんと張っていたロープが少したわんだ。

 それを見逃さなかった波多君が、もう一度声をかける。


「おい、もう一回引くぞ!」


 そうしてもう一度引くと、先ほどが嘘だったかのように簡単にロープはこちら側に戻ってきた。