確かに屋敷の中から外に出られそうにないのでは、白羽部長の言うように生け垣を抜けていくしかない。

 薔薇の(とげ)で体中ずたずたになるだろうけど、ここで怯えながら来るかもわからない助けを待つよりいいのかもしれない。


「ああ、これの使い道、思いついた」


 白羽部長はふいにそう言ってロープを持ち上げた。


「どうするんですか?」

「僕がこれを持って、生け垣の中に行ってみるよ。無理だと思えばロープを辿(たど)って帰って来られるし、抜けられそうなら後からみんなが来るときの道しるべになる」

「そんなの危ないですよ!」

「そうですよ、何があるかわからないです!」


 私と心は、思わず声を張り上げた。

 いつだって、白羽部長はみんなのために無理をする。

 こんなときこそ、頼りっぱなしではいられないと思った。


「大丈夫だよ、信じてくれ」

「……俺が行きますよ。白羽部長にばかり迷惑かけられないです」

「いや、ダメだ。咲真はありすの傍にいてあげてくれ」


 白羽部長に言われて、咲真は私を見て口をつぐむ。


「……みんな、ここは――白羽部長に任せよう」


 唐突に、水無君が言った。