『二十二時になったら、よい子はおやすみの時間』と書かれている。

 この言葉が指しているのが消灯時間なのか、十時になったら寝ろということなのか……それとも、おやすみって永遠の……?

 どんどんネガティブの深みに(はま)っていきそうな思考回路を無理やり遮断した。

 とにかく、どんな意味だとしても、二十二時にはベッドにいたほうがよさそうだ。

 ふと、引き出しの底に目をやると、そこには直接メッセージが書かれていることに気づく。

 『ようこそ、アリス』――文面をそのまま受け取れば、私を歓迎しているということだろう。

 しかし、私の名前はひらがなで『ありす』だ。

 用意周到な犯人が、こんなミスをするだろうか。

 ――ふと、庭園で聞いた忌々(いまいま)しい声を思い出す。


『アリスたちを演じて、どうか楽しませてくれよ』


 もしかすると、みんなそれぞれアリスの配役を決められているのかもしれない。

 ……私たちの部活の名前は『アリス部』――そして文化祭の出し物は『不思議の国のアリス』の劇をすることになっていた。

 犯人は、私たちのことをよく知っている人物なのだろうか……。