「はい、とっても」


 満面の笑み、とはこんな顔を指すのだろう。


「それはよかった」

「でも、僕のために、って言いましたけど、そもそもどうして……」


 ……彼は自分を俯瞰(ふかん)的に見たことがないのだろうか。


「君のためにここまでした理由はね、君がありすを愛していたように、僕も君のことを愛しているからだよ」


 僕が言うと彼は、身を固くして顔をしかめる。


「……白羽部長が、僕を?」

「ああ、そうだよ。中学のとき、傷ついている君を見て、初めて他人のことをもっと知りたいと思った。でも君は、僕が三年生の夏に姿を消した。僕はそれを引きずったまま高校生になって、それから一年経って、君に再会した。……見た目は随分、変わっていたけれどね」


 見た目がどうでも、人の本質はそう簡単に変わらない。

 僕にとっては容姿なんてどうでもよかった。

 黙って耳を傾ける彼は、嫌悪感を露わにしていた。

 自分も同じようなことをしていたくせに、彼は愚かにもそれに気づいていないようだ。


「……僕は僕らと同じ中学出身の生徒を集めて、部活を作った。それもこの日のため、全部君の復讐のためだよ! ――そうだ、一応教えておくけど、君に直接の傷を負わせた奴らは全員とっくに死んでいるから、安心していい」

「どうやって……」

「金と縁があれば、簡単なことさ」


 ――つくづく、僕と彼は似ている。

 けれど彼は不服そうに、顔を歪めている。