「咲真のおかげ、とでも思ってる? あいつは犯人を見つけてなんていないよ。証拠もないのにでっち上げただけ。犯人だと決めつけられたのは、精神病棟から抜け出して徘徊していた男だ。たった一度ポストを覗いただけのその男を、咲真は犯人だと決めつけた。……なんでかわかる? ありすのヒーローになりたかったからだよ」


 ……そんなの、知らなかった。


「――でも、ストーカーからの手紙は確かに止んだ」

「止んでない、ありすが見るより先に咲真が捨ててただけだよ」


 でも、そうだとしても。


「どうして水無君が、そんなこと知ってるの……?」

「……先に謝るよ、ストーカーだなんて勘違いさせてごめんね」


 水無君は意味深な言葉を吐いて、シャツのボタンを一つ外した。

 首元の包帯を、するりと解く。

 そこに現れたのは、見覚えのある、タトゥーだった。

 ――アネモネ、だろうか。

 首筋に咲き誇るそのタトゥーは、咲真に見せられた映像で見たものと同じだ。

 私の家の前を、ランニングしていた人物。

 あの映像で、その人の顔は見えなかった。