私は何も言わなかったけれど、水無君は自ら語り始める。


「いくら傷物でも、若い女、ってだけで稼ぐ手段はいくらでもあったし、そんなことを繰り返してれば手術をしてくれる縁にも巡りあえたよ。男って、本当に頭が悪くてずるいよね」


 ……水無君――いや、衣純ちゃんというのが正しいのだろうか。

 彼女が何をしてきたか想像して、その日々はさぞ壮絶だったのだろうと思う。

 苦しく、辛かったのではないだろうか。

 でも、どうして。

 どうしてそこまで、変わろうと思ったのだろうか。

 そんなにしなくても、すべてを捨てて姿を(くらま)ませたのならいくらでもやり直せたのではないだろうか。


「水無君……本当なの?」

「……今まで(だま)しててごめんね。本当だよ。全部、真実だ」


 そう言う水無君の顔には、もう笑みが張り付いてはいなかった。

 彼は真剣な眼差しで、私をじっと見据えている。

 ……もう、信じるしかなかった。

 水無君は衣純ちゃん――いくら疑おうときっと、それが真実であることに変わりはない。


「――みんなを殺したのは、復讐?」


 『傍観者』への制裁。

 そのための処刑ーーそういうことなのだろうか。