青々と茂っていた芝が、赤く染まっていた。

 ――いや、違う、ただ染まっているわけではない。

 何か大きく、文字が書いてある。


『夢から覚めて、アリス』


 ……これは何の、誰からのメッセージだろう。

 これが夢ならどんなにいいか、覚められるものなら覚めてほしい。

 今、ここにいるのは現実だ。

 犯人の仕業かと思うと、苛立ちを覚えた。

 こんな現実を生み出したのは誰のせいだ。

 ――苛立つ頭の片隅で考えるが、意図は掴めない。

 他に何かないか庭園を探したけれど、見つけることはできなかった。

 咲真の見ているモニターに繋がるカメラがどこにあるかはわからないが、両手で大きくバツ印を作った。

 メッセージはあの大きさなら咲真もモニターで見えているだろうから、その他には何もないという意味だ。


『庭園には何もないか……』


 咲真には伝わったようで、放送で返事が返ってきた。


『水無は?』


 咲真が問う。

 庭園には何もないし水無君と落ち合おうと、屋敷内へ向かう。


『屋敷内も何もない?』


 向かう途中、咲真が訝しむ声が響いた。

 水無君が合図をしたのだろう。

 ……屋敷内にも、何もないなんて。

 咲真の努力は、報われなかったということになるのか。

 屋敷に入ると、ホールで水無君が待っていた。