「あ、ご、ごめん! なに?」

「……咲真のこと、心配?」

「心配だよ!」


 思わず語気を荒げてしまった。

 水無君は目を丸くして、けれどすぐに細めて微笑んだ。


「きっと見つかるよ。それに、僕がいるから大丈夫」


 ぽん、と軽く頭を撫でられた。

 こんなときにまで私を気遣ってくれる水無君は、やっぱりすごく優しいんだと思う。

 ほんの少しだけ不安が晴れて、ほんの少しだけ軽くなった足取りで一階に向かう。

 そして、ホールに着いたとき、ザザッというノイズが聞こえた。

 ……これは放送の前兆。

 もしかしてまた、ハートの女王が誰かの処刑を望んだのだろうか。

 思わず目を瞑り、身構える。

 水無君が私の肩に手を置いた。

 ――しかし、聞こえてきた放送はいつもと違っていて、よく知っている声だった。


『ありす、水無! 聞こえる? 聞こえたら手を挙げてくれ!』