水無君の部屋の前で、落ち着いたら声をかけてと伝えた。

 けれど反対に、私がその気になったらいつでも協力すると言われてしまった。

 とりあえず一度自分の部屋に帰ってきたはいいものの、すぐに咲真を探しに行きたい。

 鏡の前に立つと、涙でぐしゃぐしゃの顔が映った。

 少しだけみんなのことを考えて、さらに頬が濡れた。

 ……でも、泣くことならいつでもできる。

 だから、今はもうやめる。

 涙を拭って冷たい水で顔を洗うと、少しだけすっきりした。

 そういえば、制服が真っ赤なことに気がついた。

 水無君に驚かれるかもしれないけれど、仕方ない。

 制服はそのままで、水無君の部屋に向かった。

 部屋から出てきた水無君は、やはり血塗れの私に驚いて、一瞬言葉を失った。

 しかしそれには何も触れず、「行こうか」と声をかけてくれた。

 ……水無君は今、どういう気持ちでいるのだろう。

 涙を見せず、弱音を吐かず、平然としている。

 気が触れているわけでもなければ絶望しているわけでもない。

 そんな彼を見て、私もそれくらい気丈で在りたいと思った。

 二階、三階の個室を二人で探したが、咲真は見当たらなかった。

 いよいよ不安に押しつぶされそうになってくる。


「……りす、ありす」


 気がつくと、水無君に顔を覗き込まれていた。