見れば見るほどに、近づけば近づくほどに、足がすくむ。

 涙が止まらなくなる。

 ――心は最後に、何を思って死んでいったのだろう。

 ……考えても、仕方のないことだった。

 処刑台の上、心の体の傍に拳銃と弾丸を置いた。

 そして、心の頭部を拾い上げる。

 思ったよりも、重く感じた。

 可愛い顔も、いい匂いのする髪も、今はもう、見る影もない。

 ……グロテスクであるはずの光景を、不思議とそうは思わなかった。

 手のひらに、ぐちゃりとした感触。

 制服に、心の血液がべったりと付いた。

 そんなの、何とも思わなかった。

 ただ、悲しくて、悔しかった。

 ……彼女が、少しでも報われますように。

 それだけを願って、手を合わせた。

 心との別れを済ませた後で、ふと気づく。

 ――咲真が、姿を見せない。

 処刑の前の放送で庭園に集まれと言っていたけれど、それでも咲真は来なかった。

 ……何かあった?

 思わず嫌なことばかり頭に浮かんで、慌てて否定する。

 ……咲真を見つけないと。

 ここにはもう、たった三人しかいない。

 咲真にまで何かあったら私は、それこそ正気でいられないかもしれない。

 ――少し経ったら……水無君の気持ちの整理がついた頃、咲真を探すのを手伝ってもらおう。

 それまで私も、部屋で休むことにした。