そんなざらついた声を聞くのは何度目だろう。

 心はビクリと肩を震わせて、手の力を緩めた。

 水無君が心を私から引き離す――そうして数秒も経たないうちに、いつの間にか近くに来ていた仮面たちが心の体を抱えていた。

 解放された喉を、一気に不足分の空気が通り、思わずせき込む。


「み、水無君……っ……」


 水無君は、仮面たちを止めようとしなかった。

 それは私も同じで――咎められることではない。

 仮面たちに抵抗したところで、何も変わらないのはわかりきったことだ。

 ただ、心が処刑台に連れられる様子を無表情で見つめる水無君が、ひどく不気味に思えて仕方ない。

 心は仮面たちの腕の中で項垂れたまま、「どうして」という言葉を繰り返している。

 ……心が処刑されてしまう。

 いくら止めたいと願っても、私たちは抗う術を持ち合わせてはいなかった。


『準備が整いました。庭園にお集まりください』


 立ち尽くす私たちの鼓膜が震わされる。

 喚く心に、胸が痛む。

 何もしてあげられない。

 恨まれても、憎まれても、救いを求められても。

 私たちはただただ無力で、彼女の惨い死を眺めることしかできなかった。

 ――これで最後だ。

 心の命が終わるというのに、私は何を言っていいかわからなかった。


「心……ごめん……」