「心……やめて」


 冷汗が額を伝う。

 心の震える指先は、今にも引き金を引こうとしている。


「黙ってって言ってるでしょ!? ありすも、私の言うこと聞いてくれないんだね?」


 唾を飲み込むことさえ、ひどく難しく感じた。


「――どうして、って顔してるね。これ、水無からの最後のプレゼントなんだ。お別れの餞別(せんべつ)だって。そんなものまで渡してきて、本当、笑える。せっかくだから、まずは原因のありすに使いたいなぁ」

「心……お願い、そんなことしないで」


 きっと心に、私の声なんて届かない。

 それでも、本心を告げた。

 半分は自分のため――私は死にたくないから。

 半分は心のため――人殺しになんてならないでほしいから。

 心はそれを、鼻で笑う。


「――言うこと聞いてくれないなら、もう、いらない。ばいばい、ありす」


 ――ああ、もうダメ。

 心が指先を引くのを見て、目を瞑った。