心は少しだけ楽しそうな表情で――いや、違う。

 浮かべているのは自嘲、そう思った。

 口の端を歪めているのは、自暴自棄の証に見える。

 そんな心の質問に、答えることができなかった。

 しばし続いた沈黙を破ったのは、心だった。


「――ありすのせいじゃないかなぁ?」


 ……どうして。

 心の言っていることやその意図が、先ほどからちっとも理解できない。


「昨日、何してたの? 二人きりで」


 黙る私の顔を、心が覗き込む。

 その表情から、明るく優しい彼女の面影は消え失せていた。

 ーー心は勘違いしているんだ。

 やましいことなんて一つもない。

 ……昨日、部屋に帰る前の「僕の部屋に来る?」という台詞は少し引っかかるが、あれだって水無君にからかわれただけだ。


「何もしてないよ! 昨日は私が恭君に襲われて、そしたら水無君が助けてくれたんだよ……!」