「ありす、今から探すのは……もう、夜の十時になるし」


 さっき、時計を見損ねたから気づかなかった。

 もう、そんな時間なんて……確かに咲真を探して歩き回るのは、少しだけ気が引ける。


「ノックも気づかないくらい熟睡してるのかもしれないし……咲真に会うのは明日にしたら?」


 水無君の提案に、少しだけ考えて頷いた。

 心細いのは、我慢することにする。


「じゃあ、ありがとう、水無君。 おやす――」

「僕の部屋に来る?」


 水無君の言葉に驚いて、返事を忘れた。


「……冗談。おやすみ、ありす」


 普段見ることのない無邪気な水無君は、手を振って行ってしまった。

 ……今の場面、咲真や心が見たらきっと怒るだろう。

 少しだけ熱い顔を手で(あお)ぎながら、自分の部屋に戻り、一人で眠りについた。