「気にしないで。ありすは――……ありすは、心の親友だからね」


 そう言って微笑む彼に、いつもと同じ優しさを感じる。

 先ほどの冷たい表情に感じた不安は、あっという間に溶けて消えた。

 でも……安心している場合ではなかった。

 ちらりと恭君へ送った視線は、水無君に遮られる。


「恭は……仕方なかったよ」


 水無君の言う通りに――そう、思うしかなかった。

 やらなければ、やられていた。

 本当は、仕方ないなんて言葉で片付けたくなんてない。

 けれど、罪の意識で潰れている暇はないんだ。

 小さく頷いて、その場を後にした。

 何だか心細くなってしまったし、今日も咲真と一緒に寝よう――それを、私の部屋の前まで送ってくれた水無君に伝えた。


「でも、咲真、いないみたいだよ?」

「え?」


 どこへ行ったのだろう。

 咲真の部屋をノックするが、確かに反応はない。


「僕もさっき咲真と話したくてノックしたけど、返事がなくて」


 ドアノブを回したけれど、ドアには鍵がかかっているようで開かなかった。

 ……私と同じように、逃げ道を探しにでも行ったのだろうか。

 探しに行ったほうがいいかもしれない。