それは物理的なものではなく、鼓膜に届いた、大きな衝撃。

 恐る恐る目を開けて、その正体を理解した。


「……頭の悪いトランプ兵」


 冷たい視線を恭君へ向ける水無君は、憎らしげに呟いた。

 彼の右手に握られているのは――拳銃。

 その銃口が向いた先では、恭君が血を流して倒れていた。

 銃声――ここに来るまでは聞いたことなんてなかったのに、いつしかもう聞き慣れてしまいそうだ。


「……どうして」


 どうして水無君がそんなものを?

 見たことのないような冷めた表情の彼が、何を考えているかわからない。

 恐怖に邪魔をされて、上手に言葉が出なかった。


「……ごめんね、黙ってて」


 ……彼はこれから何を言うのだろう。

 不安と絶望の中に少しだけ、場違いな期待が顔を覗かせる。


「僕の部屋に……置いてあったんだ。白羽部長や、恭や波多と同じようにね」


 その答えに少しだけ安心して、少しだけ残念に思う。

 ――水無君がハートの女王だと言ってくれればよかったのに。

 私の中の黒い部分がそんなことを呟いたので、慌ててその言葉をかき消した。


「そう……だったんだね。ありがとう、助けてくれて」


 私がそう言うと、水無君の顔にはすうっと先ほどまでとは全然違う表情が下りた。