即座に理解して、踵を返し階段を駆け上がるが、恐怖に足を捉われて普段通りの速さは出ない。

 あと数歩で二階、そう思ったとき、私の足に恭君が触れて――次の瞬間、私の体は思い切り引っ張られた。

 ――ただそれは、下ではなく、上に。

 私の腕を掴んで二階へ引き上げたのは、水無君だった。

 それを理解すると同時に、恭君も二階へ追いついて、水無君は私を自分の後ろへと庇ってくれた。


「み、水無君……」

「水無、邪魔だよ……僕は今から、アリスの首を刎ねるんだ」


 水無君は何も言わず、私を背中に隠したままじりじりと後退する。


「どかないなら、君も一緒に刎ねてあげようかぁ?」


 恭君は鋏の刃を水無君に向けている。

 ……今、私が出て行けば、水無君は助かる。

 恐怖を心の奥へ押しやって、最適解を行動に移す決心がついた、まさにその瞬間。

 恭君が、水無君に突進する。

 それを見た私は、二人の間に入って――そして。

 ……私が目を瞑ったのは、衝撃を受けたからだった。