始まりは5月。

じめじめと蒸し暑い季節の頃。

いつも通り遥と駄弁る私。

「ねぇねぇ、終わったらゲーセン行こうよー。」

「待って―。着替えてくる―。」

「うん。」

下駄箱まで行ったところで、ふと気付いた。

「あ、雨降ってる。」

当然私は傘なんて持っていない。

「おまたせっ!」

颯爽と登場してくる遥の可愛いポニーテールが左右に揺れる。

「どーしよ。遥、傘持ってる?」

「 うーうん。由美は?」

私の名前、琴乃由美。

「えー、持ってない、、。」

このままじゃ駅までずぶ濡れだ。

歩いて15分ぐらい。

走るなら10分程度のこの距離。

「もー最悪。急に降ってきたねー。」

しまった。どーしよ、、。

「あれ?どうしたの?ひろくん?」

「これ、使えば?折りたたみのやつあげるわ。」

「ほんと!?ありがとー!!」

遥の幼馴染、ひろくん。

長身イケメン皆の憧れの的。

流石としか言えないこの感じ。

おまけに可愛い幼馴染までいる。

「由美、帰ろっ!」

そう言って、ひろくんに貰った折りたたみ傘を広げながら、遥は私に満面の笑顔を向けた。