マーシュにはまだ幼い弟がいて、名をソレルと言う。
 父と顔立ちが似ていることから父に溺愛されており、文武の才も持ち合わせているため将来も期待されている。
 年齢を鑑みて、家督の引き継ぎは自分が行うことになったが、今回の失敗を踏まえて父が考えを改めてしまうかもしれない。

「どうすればいい……これからどうすれば……」

 マーシュが頭を抱えて唇を噛み締める中、不意に部屋の扉が開かれる。
 そこから父のチャイブが入ってきて、マーシュは思わず顔をしかめた。
 その反応に、父は軽く肩をすくめる。

「盛大に躓いたな、マーシュ。己が任される開拓地の状況もまともに把握せず、魔物被害をここまで拡大させるとは」

「……まだ対処可能な規模です。開拓に支障はありません。ところでなんの用でしょうか」

 平静を装いながら強がり、マーシュは父に問いかける。
 するとチャイブは手に持っていた紙を、読んでみろと言わんばかりにマーシュの膝上に放った。

「新聞? これがいったいなんだと……」

 と、首を傾げながら紙面に目を通すと……
 そこには、目を疑うような記事が大々的に書かれていた。