「うん、ディルの方も大丈夫そうだね」

「あぁ。でも、勝負はまた僕の負けみたいだね。君の方が早く魔物を討伐したから」

「残念だったね、ディル。でも作戦が成功したんだからいいでしょ。それに時間的にはそこまで差はないんだし」

 私が見に来た時には、すでに決着の間際だった。
 今回の勝負は僅差だし、引き分けと言っても差し支えないと思う。
 それでもディルは、「いいや僕の負けだね」と意固地になって否定してきた。
 ともあれ、初めての開拓作戦は何もトラブルが起きることなく、成功を収めることができたのだった。

――――

 開拓作戦が終わり、町へ帰った後。
 町で待っていた開拓兵たちに、作戦成功の旨をディルの口から伝えた。
 その報告に皆は湧き立ち、森の開拓にますます意欲を募らせていた。
 そして数日が経った頃……
 町では開拓作戦での出来事が、噂となって流れていた。

「ディル様とローズマリー様のお力は、本当に凄まじかったぞ」

「四階位魔法の複合発動かぁ。俺も見てみたかったな」

「ぜひローズマリー様に魔法の教授を願いたいものだ」

 町の通りを歩く中、そんな会話が至るところから聞こえてくる。