二体のうち、赤い鱗を持つ赤蛇(ヴァーミリオン)が私の方へ向かってくる。
 噛みつこうとしているというより、こちらを丸呑みにするかのように大口を開けている。
 私は体内の魔素を操作し、肉体活性を促す性質に変化させた。

(【超人的な時間(アブ・ノーマル)】)

 急激に体が軽くなり、私はすかさず赤蛇(ヴァーミリオン)の噛みつきを跳び越える形で躱す。
 横を一瞥すると、ディルも同じく身体強化魔法を使って、青蛇(セルリアン)の攻撃を回避していた。
 不意にディルと目が合い、お互いに頷きを交わす。
 今回の作戦の肝は、赤蛇(ヴァーミリオン)青蛇(セルリアン)を分断すること。
 奴らの連携が厄介なので、それを阻止しつつ、各個撃破を狙うというものだ。
 そのために私たちは、事前に考えていた作戦を実行することにした。

(性質は岩。形状は壁。【可視された境界線(ボーダー・ライン)】)

 地面に手を突き、魔素を流し込んだ瞬間、土の中から岩の壁が飛び出した。
 それは赤蛇(ヴァーミリオン)青蛇(セルリアン)を分断するように、奴らの間に分厚く大きく聳え立つ。
 同じくディルも地面に手を突き、岩壁の魔法を発動させて、二重の巨大な壁が赤蛇(ヴァーミリオン)青蛇(セルリアン)を二分した。
 これで簡単には合流ができない。得意の連携もできないはず。
 これからこの森を農園や畜産に利用するため、あまり荒らしたくはないけれど、二体を一緒にさせないための苦肉の策だ。