いや、もしかしたら……
 これはディルとの競争でもあるから、まるで魔法学校の課題の一つのように思えて、緊張が和らいでいるのかもしれない。
 まさかそれも計算に入れて、ディルは今回の作戦も勝負の一つだと明言したのかな?
 密かにそんなことを考えていると、唐突に一人の開拓兵が素早くこちらを振り返った。

「ディル様、前方より強烈な反応が!」

 その一言ですべてを察して、開拓兵たちは後ろへ退がり、私とディルは身構える。
 直後、地震が起きたかのように足元が揺れ始めて、徐々にそれが強くなっていった。
 遠方に目をやると、木々を薙ぎ倒しながら迫ってくる巨大な二つの影が見える。

「やるよ、ローズマリー」

 ディルのその声を合図にするように、目前の木が倒されて、巨大な影のその姿が鮮明に視界に映し出された。
 赤い鱗を持つ大蛇と、青い鱗を持つ大蛇。
 これが赤蛇(ヴァーミリオン)青蛇(セルリアン)
 森林地帯の開拓を妨げている厄介な魔物たちだ。
 奴らは木を倒した勢いのまま、大口を開いてこちらに飛びかかってきた。