作戦会議から一週間後。
 いよいよ作戦当日となり、私たちは森林地帯へ向けて馬車を走らせていた。
 途中で一つ村を経由して、丸二日をかけて森林地帯を目指す。
 他の開拓兵たちもついて来ているので、なかなかの大所帯だけど、一応いくらかの兵は町に残っている。
 単純に町の警備が手薄になるのを防ぐためと、魔物との戦いでなるべく犠牲者を出さないためだ。

「確認なんだけど、他の開拓兵の人たちは一緒に戦ってくれないんだよね?」

「あぁ。彼らも修練を積んだ優秀な魔術師だけど、今回の戦いに限っては、言い方は悪いけど足手まといになる可能性が高いからね。一応、有事の際に控えておいてはもらうけど」

 同じ馬車に乗っているディルは、窓の外に向けていた目をこちらに移して、今一度作戦の内容を伝えてくれる。

「あくまで今回の作戦は、僕と君で開拓の妨げになっている大蛇の魔物を倒すことだ。その方が一番被害が少なく、討伐成功の可能性が高い……と、僕は考えた。ていうかその方が、君も気兼ねなく戦えるだろう」

「まあ、それはそうだけど」

 魔物討伐は、私はできれば一人でやりたいと思っている。
 他の人と協力して戦った経験がないからというのもあるけど、魔法で周りを巻き込んでしまうかもしれないから。
 ただでさえ開拓兵は王国軍出身の高名な魔術師ということだし、そんな人たちに怪我をさせるわけにはいかない。
 いや、生まれとか関係なく、他人は傷つけちゃいけないけどね。

 それにしてもやっぱり、一人で強敵と戦うのは少し不安ではある。
 失態を演じれば、ディルに見限られて婚約関係も解消されて、実家への援助もしてもらえなくなるかもしれないし。
 その懸念を悟られたかのように、ディルが訝しい目を向けてきた。

「それともくだんの森林地帯が近づいてきて、怖くでもなってきたのかい? なんだったらやっぱり、他の開拓兵たちも戦いに参加させようか?」

「……いや、大丈夫だよ」

 不安はあるけど、一人で戦う方が都合がいいのは確かだから。