「ディル様でしたら、一対一の状況を作ればその魔物も必ず討伐できます。しかし別の一体が邪魔をするため、その状況も作れずにいるのです」

 悔しそうに歯を食いしばる。
 おそらく開拓兵の人たちだけでは、もう一体の魔物を押さえつけておくことができなかったのだろう。
 その悔しさがサイプレスさんの表情から感じ取れて、他の兵士たちも申し訳なさそうに俯いていた。

「そこで君の出番だよ、ローズマリー」

「えっ?」

「君にはもう片方の大蛇の相手をしてもらう。僕と君が中心になって、それぞれ大蛇の魔物を倒すんだ」

 私とディルが一体ずつ……
 改めて作戦内容を聞かされて、少し驚いて固まっていると、ディルはとても簡潔にまとめてくれた。

「何も難しいことはないさ。これも魔法学校でやっていた勝負と変わらない。どちらが先に大蛇の魔物を倒せるか、競走ってことだよローズマリー」

「こ、この状況でも勝負するつもりなんだ……」

 でも、確かにその方がわかりやすい。
 二体の大蛇に連携をされると厄介だから、そいつらを分断するようにそれぞれ相手をする。
 見方を変えれば、どちらが先に大蛇を倒せるかの競争だ。

 それが私の、ディルの婚約者としての初めての仕事となったのだった。