「じゃあ、どうして今まで討伐してなかったの?」

「しなかったんじゃなくて、できなかったんだ。単純に戦力不足の関係でね」

「えっ? ディルがいても?」

「……その問いかけに頷きを返すのはすごく癪だけど、まあその通りだよ」

 あのディルがいても、戦力不足で倒せない魔物がいるなんて。
 しかし話はそう単純なものではないらしく、討伐が難航している明確な理由があった。

「その魔物は強固な魔装を持っていて、並の魔法では傷一つ付けられない。そして特に厄介なのは、その問題の魔物が二体いることなんだ」

「二体?」

「赤い鱗を持つ大蛇の魔物と、青い鱗を持つ大蛇の魔物。それぞれ『赤蛇(ヴァーミリオン)』と『青蛇(セルリアン)』と僕たちは呼んでいる」

 ディルはうんざりするような仕草を交えて、さらに続けた。

「その二体は常に行動を共にしていて、倒す場合は確実に二体を同時に相手にすることになる。一体だけでも厄介なのに、二体は上手く連携をとってお互いを助け合うんだ」

「それは確かに面倒だね……」

 協力し合う魔物なんてすごく珍しい。
 ディルほどの実力者がいて、今まで討伐できていなかったのも納得できてしまう。
 その時、サイプレスさんがディルをフォローするように言葉を紡いだ。