今度は直撃した様子が明らかに目に映る。
 しかしやはり彼女の魔装は、サイプレスの三階位魔法でまったく削れることがなかった。

(なぜ魔装がほとんど削れないのだ! 奴はいったい何をしている……!)

 魔装が削れたそばから即時修復して、削れていないように見せているだけならまだわかる。
 しかしそんな気配すらまるでなく、そもそも魔装が削れた感触がほとんどないのだ。
 ただ立っているだけで魔法を防がれ続けて、サイプレスは怒りを募らせる。

「【審判者の雷槍(パニッシュ・メント)】!」

 その憤りに任せて、三階位魔法を連発していく。
 これは何かの間違いだと証明するかのように。
 しかしローズマリーの魔装は削り切れない。
 やがてサイプレスの手から魔法陣が消え、顔に疲れの色を残すのみとなった。

「くっ、魔素が……!」

 三階位魔法の連発による魔素の枯渇。
 本来であれば模擬戦では、相手の魔装を削って修復させて、魔素を消費させていくのが流れとなっている。
 しかしローズマリーは、魔法を一度として使わずに、相手に魔法を連発させるだけでサイプレスを無力化してしまった。
 それを見た審判の開拓兵が、戸惑いながらも判定を下す。

「サ、サイプレス・ファーミングの魔素の枯渇により、勝者はローズマリー・ガーニッシュとする」

 そこに歓声などはなく、周囲は驚きのあまり固まっていた。
 ただ一人、彼女の実力を知っているディルを除いて。