「はっ?」

 土埃が晴れたそこには、変わらずローズマリーが佇んでいた。
 魔装によって肉体に傷がないのは当然ながら、その魔装すらもまったく損耗していない。
 その光景に、サイプレスだけでなく開拓兵たちも驚愕していた。

(……何かタネがあるのか)

 でなければ三階位の魔法をまともに受けて、魔装がほぼ無傷でいられるはずがない。
 それを炙り出すためにも、サイプレスは攻撃を続けることに決めた。

(性質は風。形状は刃。【研ぎ澄まされた風刃(シュレッド・ゲイル)】)

 雷の槍に続いて、今度は風の刃。
 右手に展開された緑の魔法陣から鋭利な突風が吹き荒れる。
 その着弾を見届けるより先に、サイプレスは続け様に攻撃を仕掛けた。

(性質は氷。形状は礫。【凍てつく礫(チル・グラベル)】)

 洗練された魔法技術により、瞬く間に緑から青の魔法陣に切り替わる。
 そこから冷気を帯びた氷の礫がいくつも放たれ、風の刃に後続してローズマリーを襲った。
 触れた瞬間に鋭利な風が身を引き裂き、氷の礫が接触部を凍結させる。
 先ほどのタネを見破るための魔法ではあるが、この二撃だけでも充分な決定力があった。
 だが……

(また……!) 

 ローズマリーは避けようとせず、魔法をそのままその身に受けた。