先に動いたのはサイプレスだった。

(性質は雷。形状は槍。【審判者の雷槍(パニッシュ・メント)】)

 彼が構えた右手に黄金色の魔法陣が展開される。
 そこから槍の形をした雷が射出され、高速でローズマリーの元まで迫っていった。
 魔素を雷に変質させて、槍の形状と化して高速射出する三階位魔法――【審判者の雷槍(パニッシュ・メント)】。
 その雷撃は高度な魔装を持つ魔物も容易く貫き、人の身であれば余波を受けただけで焼け焦げる。
 一流魔術師の魔装であれば肉体を守ることはできるだろうが、その一撃だけで魔素の大損失は免れない。
 だが……

(んっ?)

 ローズマリーはその場から動くことなく、正面から雷の槍を食らった。
 その衝撃によって土埃が舞い、見守っている開拓兵たちの元まで風が吹く。
 ローズマリーがあまりにも無防備に魔法を受けたため、周囲は騒然としていた。

(なぜ避けなかったのだ? 別の魔法で相殺するという手もあっただろう。まさか避けられなかったのか?)

 実力不足を疑っていたとはいえ、よもやそこまで軟弱だとは思っていなかった。
 しかしこれで実力が足りていないことが証明できた。
 ディル王子に勝ったことも何かの間違いであったと示すことができて、サイプレスの中にあった英雄像はしかと守られたのだ。
 ……と、思っていたサイプレスの目に、信じられない光景が映し出される。