(この模擬戦の目的は、不正の証拠を掴むこと。それを隠して正面から立ち向かってくる可能性もあるが、それなら完膚なきまでに倒して実力不足を証明するまで)

 この模擬戦はどちらに転んでも、サイプレスの目的を果たすことができる良案だった。
 と、安全への配慮までできたところで、いよいよ模擬戦を執り行うことになった。
 審判は開拓兵の一人が務めることになり、二人から少し離れたところで声を上げる。

「ではこれより、サイプレス・ファーミングとローズマリー・ガーニッシュの模擬戦を執り行います」

 その合図に、サイプレスは右手を開いて前に構える。
 一方でローズマリーは、ゆったりとした姿勢で佇み続ける。
 周りの開拓兵たちの間に緊張が走り、空気がひりつくのを全員が感じた。
 
 そして審判は右手を上げて、それを素早く振り下ろす。

「それでは……始め!」

 サイプレスとローズマリーの模擬戦が始まった。