その思惑通りに、他の開拓兵たちも見守る中、サイプレスとローズマリーは演習場の中央で対峙した。
 サイプレスは今一度、模擬戦のルールを明確にしておく。

「模擬戦のルールは、従来通りの魔装を展開しての擬似戦闘でよろしいですか?」

「はい、それで大丈夫です」

 基本的に魔術師同士の模擬戦では、魔装を展開してそれを打ち破ることを目的とする。
 魔物が無意識下で展開させている魔素の鎧――『魔装』。
 魔術師はそれを意図的に展開させて、肉体を守ることができる。
 しかし魔装が削られて魔素を消耗していけば、いずれそれを保てなくなってしまう。
 模擬戦ではそれを決着の指針として扱うことが多く、比較的安全に擬似戦闘を行うことができるのだ。
 そしてサイプレスは、さらにルールに肉付けをしていく。

「先に魔素を切らして、魔装を保てなくなった方が負け。そして使用魔法の階位については、三階位までの魔法のみでいかがでしょうか?」

「わかりました」

 模擬戦ではこのように、あらかじめ安全のために使用魔法に制限を設けることがほとんどだ。
 魔素が残り僅かの状態で、威力の大きい魔法を食らえば、魔装を貫通して肉体にダメージが及ぶ危険性があるから。
 魔法の階位は、その基準としてよく用いられている。
 サイプレスとしても、別にローズマリーを痛めつけたいがために模擬戦を仕掛けたわけではないので、安全面への対策も抜かりなく盛り込んだのだった。