その意思が伝わったのか、反対気味だったディルも折れるように頷いてくれた。

「……わかったよ。なら思い切り君の実力をみんなに見せつけてくるといい」

「うん、ありがとうディル」

 背中を押してくれたディルにお礼を返すと、彼は僅かに顔を俯けて何かを囁いた気がした。

「…………まあその方が、活躍の場を作ってあげやすくなるだろうからね」

「んっ? 何か言った?」

「いいや別に」

 そのタイミングで、サイプレスさんが促してくる。

「では、さっそく模擬戦を行うために、町の演習場へ行きましょう」

「演習場?」

「開拓兵の訓練用に設けたものがあります。そこでしたら町への被害を出さずに模擬戦が行えるかと」

「なるほど、わかりました」

 そんなところがあったんだ。
 この町に来てからずっと屋敷にこもって魔導書に浸り続けていたから、町の設備について何も知らなかった。
 屋敷の中庭が広いから、そこでも軽い模擬戦ならできる気はするけど、屋敷に被害が出たら問題だからね。
 というわけで私は、サイプレスさんと模擬戦を行うために、演習場へ向かうことになった。