サイプレスさんから思わぬ提案を受けて、私は固まる。
 まさか模擬戦をやろうと言われるなんて思ってもみなかった。
 周りの兵たちも驚いた様子を見せる中、ディルが険しい顔でサイプレスさんに返す。

「そこまでする必要はない。彼女の実力は開拓作戦を指揮する僕が誰よりもよく知っている。それで充分だと思うけど」

「他の兵たちの前で力を示さなければ、開拓兵たちの間に滞っている懸念は晴れません。ですので模擬戦でローズマリー様の力を明らかにするのが一番かと」

「だからって……」

 ディルは私を開拓作戦に誘った手前、試験的な模擬戦に反対の意を示している。
 そんなやりとりが行われている間に、私は冷静になって、ディルの言葉を遮るように声を上げた。

「わかりました。その模擬戦、受けさせていただきます」

「……ローズマリー」

「私も何もせずに開拓作戦に加えてもらうのは、少し申し訳ないって思ってたからいい機会だよ」

 それにサイプレスさんの言い分にも納得ができたから。
 確かにディルの言葉があるとはいえ、実際に力を見てみないことには信用ができない。
 開拓作戦では危険な魔物との戦いが常なので、尚更味方の戦力は詳しく知っておきたいだろう。
 私としても、ここまでずっとディルにおんぶに抱っこだったから、みんなに認めてもらうなら自分の手で力を証明したい。