「それはつまり、ローズマリーの戦闘能力と魔法技術を疑っているってことでいいのかな?」

「前代未聞の女性魔術師の参入。それが魔法学校を卒業したての新人魔術師となれば当然の懸念かと。言葉にはしませんが、同じ気持ちの開拓兵も少なからずいるのが事実です」

「自惚れじゃないけど、彼女は僕が一度として勝つことができなかった魔術師だよ。在学中、僕が常に次席の椅子を温めさせられていたのは、ここにいるローズマリーがただの一度として首席の座を空け渡すことがなかったからだ。それはもう知っているよね」

 ディルは私の方を一瞥して、サイプレスさんに再び問いかけた。

「だから僕はローズマリーを開拓作戦に勧誘したんだ。それでも彼女の実力が信じられないっていうのかな?」

「ディル様のお力は重々理解しております。ローズマリー様が魔法学校の順位でそのディル様を上回っていたことも。しかし魔法学校の成績だけですべてを計れるわけではありません。作戦において何より重要となるのは……実戦経験です」

 その一言に、私は頭を叩かれたような衝撃を受ける。
 サイプレスさんは頭ごなしに否定しているわけじゃない。
 魔法学校の成績だけでは、すべてを計ることができないのは事実だ。
 そして実戦経験に勝る信頼材料がないということも。
 私は圧倒的にその実戦経験が足りていないと見られているらしい。
 それがたとえ、ディルの推薦を受けた人物であっても。

「背中を預け合う仲間として、彼女の信用が足りていないのは明らかです。そのわだかまりを残したまま、彼女を計画に組み込めば、開拓作戦に支障が出る恐れがあります」

「……で、君はローズマリーが作戦から抜ければそれで満足なのか?」

「兵士たちの不安を払拭するのでしたら、それが最善かと思われますが、ディル様のお言葉ということもあります。ローズマリー様が開拓作戦に参加できるほどの魔術師か、今一度確かめるというのはいかがでしょうか?」

「確かめる?」

 ディルが訝しそうに首を傾げると、サイプレスさんは私の方に視線を向けて、驚きの提案をしてきた。

「私と模擬戦をしていただきます。そこでローズマリー様の実力を、兵士たちの前で明らかにさせていただきたいのです」