「どうしたのかなサイプレス? 何か問題でも?」

「一つ聞かせていただきたいのですが、本気で彼女を開拓作戦の一員に加えるおつもりですか?」

 サイプレスと呼ばれた彼の、刺すような視線が私を射抜く。
 まるで獰猛な獣に睨まれたような気持ちになって、私は体を縮こまらせた。

「そのつもりだけど、不都合でもあるのかい?」

「開拓作戦は魔物との戦闘が前提になります。当然開拓兵たちには高い戦闘能力と卓越した魔法技術が要求されるはずです」

「あぁ、それはもちろんわかっているよ。だからこそローズマリーに協力を仰いだんだ」

 それを受けて、サイプレスさんは僅かに語気を強めて続ける。

「これまで女性の魔術師が魔法の分野で目立った成果をあげたことは一度もありません。男女で確かな力差があるのは明らかです。私は彼女の開拓作戦の参加を強く反対します」

 それを聞き、ディルは赤目を細める。
 他人事ではない私は、人知れず冷や汗を流しながら息を呑んだ。
 恐れていた展開がやってきてしまった。
 サイプレスさんは女性の魔術師を信用していない側の人間だ。
 私が開拓作戦に参加することを強く拒んでいる。
 そんな私を開拓作戦に勧誘したディルは、やや不機嫌そうに問いかけた。