「初めまして、ローズマリー・ガーニッシュです。実戦経験はあまりありませんが、魔法学校で培った知識と力で、開拓作戦の役に立てるように努めさせていただきます。これからよろしくお願いいたします」

 事前に考えていた挨拶を終えて、私は頭を下げる。
 ディルに慰めてもらったとはいえ、不安なことに変わりはない。
 だから緊張しながらみんなの反応を待っていると……
 やがてまばらにだけど、パチパチと拍手が聞こえてきた。
 顔を上げてみると、みんなが笑顔で拍手を送ってくれていることがわかる。

 意外にも好感触。
 思い切り反対される覚悟で来たから、肯定的な雰囲気で驚いてしまった。
 皆が皆、女性魔術師を否定しているわけじゃないのか。
 ディルからの紹介のおかげという気もするけど、それがわかっただけでも心が軽くなり、私は思わず笑みをこぼした。
 ディルもそれを見て微かに頷いた後、表情を引き締めて言う。

「では、ローズマリーの紹介も済んだところで、さっそく作戦会議を……」

 と、ディルが改めて作戦会議を始めようとしたその時――

「少し待っていただけませんか、ディル様」

「んっ?」

 一人の開拓兵が、集団の中から一声を上げた。
 その人物は前に出てきて、私に鋭い視線を向けてくる。
 かなりの長身で、それでいて線が細い男性。
 歳は二十代半ばほど。手入れの行き届いた綺麗な黒髪と、切れ長の黒目も特徴的である。
 その上には細いフレームの眼鏡をかけていて、人差し指でしきりに位置を直している。
 王国軍からディルについて来た魔術師なので、当然ディルは彼と面識があるらしく、見知った様子で言葉を返した。