「確かに女性の社会的進出や活躍を快く思わない人間というのはいる。卒業パーティーで見た通りね。同じような者が開拓兵の中にいるとは考えたくないけど、人の気持ちまで完全に操ることはできないから」

 たとえディルについて来てくれた仲間でも、私を否定する人間はいるかもしれない。
 今一度ディルにそう言われて、私はますます不安を加速させる。
 再び耳の奥で卒業パーティーで浴びた非難が蘇り、唇を噛み締めようとしたその時……

「でも、大丈夫だよ」

「えっ?」

「もし君を否定する者たちが現れても、彼らはまだローズマリーの実力を知らないだけだ。君が魔法学校で培った力を発揮して、相応の活躍を見せれば、自ずと周囲は君のことを認めてくれるはず。僕がそうであるようにね」

「…………」

 不意に慰めにも似た言葉をかけてもらって、私は思わず固まってしまった。
 ディルが私の力を認めてくれているのは知っているけど、また改めて言葉にしてくれるなんて。
 いや、私の不安を和らげさせるために、悔しい気持ちを押し殺して慰めの言葉をかけてくれたのか。
 さらにディルは私を気遣うように続けてくれる。

「それに僕もできる限りサポートをする。理不尽にローズマリーを淘汰しようとする者がいれば、僕が必ず君を守ると約束するよ。君を開拓作戦に誘った者の責務としてね」

「……ありがとう」

 これ以上ないほど心強い言葉だった。
 長年、ライバルとして戦い続けてきたからこそ、ディルの気持ちの強さと正直さを知っている。
 ディルが必ず守ると言ったなら、絶対に守ってくれるという安心感がある。
 魔術師としてはいまだに競い合うライバルだけど、協力関係の上で、この人が味方でよかったと改めて思った。

「ていうか、魔法学校の成績で僕に勝っておいて、その弱気な態度はいったいなんだい?」

「えっ?」

「君に負けた僕の方が堂々としているなんて、僕が間抜けに映るじゃないか。もしかして嫌味のつもりかな?」

「それとこれとは話が違うでしょ……」

 あくまでそれは性格の問題じゃん。
 と思ってそう返すと、ディルは「それもそうか」と言って肩をすくめた後、「じゃあ夕方の作戦会議よろしく」と続けて書斎を出ていった。
 開拓兵たちと初めての顔合わせで不安になってしまったけど、ディルのおかげでかなり気持ちが楽になったのだった。