「開拓作戦……」

 屋敷に来てから一週間。
 いよいよ初めての仕事がやってきた。
 それを伝えるために、ディルは珍しく書斎へ来たらしい。

「その作戦会議が、今日の夕方に屋敷の大広間で行われる。開拓兵たちとの顔合わせの場にもなるから心得ておいてくれ」

「う、うん」

 改めてそう言われて、私は少し手を冷たくする。
 顔合わせか。
 開拓作戦そのものの不安も大きいけど、開拓兵たちに挨拶をするのも同じくらい緊張するなぁ。
 それが顔にあらわれていたのか、ディルが気遣うような言葉をかけてくれた。

「顔が強張っているよ。まさか緊張しているのかい?」

「そ、それはそうでしょ。開拓兵の人たちと顔を合わせるのは初めてだし……」

 いや、それ以上に……

「何より、卒業パーティーの場であれだけ色んな人たちから否定されたからね。女性魔術師の私が、重要な開拓作戦に受け入れてもらえるかわからないし」

 今でも脳裏に焼きついている。
 魔法学校の卒業パーティーで浴びた数々の非難を。

『女は花嫁修業だけやってりゃいいのによ』

『そもそも女なんかに魔術師が務まるはずねえんだからな』

『誰も貴様の力など認めていない』

 私はあくまで女性魔術師として開拓作戦を手伝う立場だ。
 だから女性魔術師を蔑視している人がいれば、開拓作戦の参加に反対される可能性もある。
 開拓兵の人たちは王国軍からやってきた魔術師たちということで、身分の高い男性魔術師が多いだろうし。
 女のくせに出しゃばりすぎと思われたりしないだろうか。
 その開拓作戦を指揮するディルも、同じような懸念を抱いているようだった。